新事業進出枠で求められる新規性・新市場とは?高付加価値を事業計画で説明する方法

工房で製品見本を示す事業者と事業計画を確認する専門家
この記事で分かること
  • 対象要件となる「自社にとっての新規性」と「新たな市場」
  • 採択審査で確認される「新市場性」または「高付加価値性」
  • 設備導入や商圏拡大だけでは足りない理由

新事業進出・ものづくり商業サービス補助金の新事業進出枠では、「新しい設備を入れる」「新しい地域で販売する」といった説明だけでは足りません。まず必要なのは、自社にとって新しい製品・サービス等を、自社にとって新しい顧客市場へ提供する取組であることです。

さらに、応募申請ガイドでは、上の対象要件を満たすことを前提に、採択審査では「新市場性」または「高付加価値性」のいずれかを満たしているかを確認すると整理されています。この2段階を混同しないことが、計画を組み立てるポイントです。

この記事では、似た言葉で混乱しやすい「新規性・新市場・新市場性・高付加価値性」の違いと、事業計画に落とし込む前の整理方法を解説します。制度全体や3つの申請枠を先に確認したい方は、新事業進出・ものづくり商業サービス補助金の総合解説をご覧ください。

目次

まず結論:対象要件は「自社にとっての新規性」と「新たな市場」の両方です

新事業進出枠では、次の2点をともに満たす事業が補助対象とされています。

確認することかんたんな意味
自社にとっての新規性自社がこれまで製造・提供していない製品・商品・サービスに新たに取り組むこと
自社にとっての新たな市場これまで対象にしていなかったニーズ・属性を持つ顧客層へ提供すること

ここでいう新規性は、世の中で初めてかどうかではなく、申請する会社にとって新しいかで判断されます。日本初・世界初である必要はありません。一方で、過去に扱っていた商品・サービスの再開や、既存商品の販売量を増やすだけの計画は対象になりません。

また、新たな市場とは、単に販売地域を変えることではありません。法人・個人、業種、行動特性など、既存事業とは異なるニーズ・属性を持つ顧客層を対象にする市場を指します。

対象要件と採択審査は、分けて考えます

まず「自社にとっての新規性」と「自社にとっての新たな市場」を満たすことが対象要件です。そのうえで採択審査では、新市場性または高付加価値性のいずれかを満たしているかが確認されます。どちらか一方を説明できても、対象要件の2点を満たさなければ足りません。

段階確認されること計画で示したいこと
対象要件製品等の新規性・市場の新規性(両方)自社の過去の実績と比べて、何が新しく、顧客層のどこが違うか
採択審査新市場性または高付加価値性社会における普及度・認知度の低さ、または同じ分野と比べた高い価値・価格の根拠

審査では、このほか経営戦略との整合性、実現可能性、公的補助の必要性なども総合的に評価されます。ここで説明する要素を満たしても、採択を約束するものではありません。

「自社にとっての新規性」は何で判断する?

日本初・世界初でなくてもよい

世の中にはすでにあるサービスでも、自社がこれまで提供したことがなく、新たな事業として取り組むものであれば、新規性を説明できる可能性があります。第1回では、公募要領公開日以降に初めて取り組んでいる事業についても、新規性を有するものとみなすとされています。

ただし、申請前に現在だけでなく過去の製造・提供実績も確認しましょう。過去に製造・提供していた製品・商品・サービスを再び始める取組は対象外とされています。

新規性が認められにくい代表例

  • 既存の商品・サービスの生産量、提供量を増やすだけの計画
  • 過去に扱っていた商品・サービスを再開する計画
  • 製造方法だけを変える計画
  • 数値で測れる性能に有意な違いを示せない計画

設備の導入後に、何を新しく提供できるのかまで整理することが大切です。設備更新そのものを目的にせず、事業の内容から逆算して考えましょう。

架空事例:金属加工業が予防保全サービスを始める場合

以下は考え方を説明するための架空事例です。実際の対象可否を示すものではありません。

これまで工場向けに金属部品の受託加工をしてきた会社が、加工技術を活かして、設備の摩耗状況を定期点検し、交換部品の提案まで行う予防保全サービスを始めるとします。この場合、単に部品の受託加工を増やすのではなく、点検・提案を含む新しいサービスを提供する点を、過去の事業実績と比較して具体的に説明します。さらに、誰に提供するのかが既存顧客と同じなら、新たな市場の説明は別途必要です。

「自社にとっての新たな市場」は、誰に・どんな困りごとを解決するかで整理します

自社にとって新たな市場かどうかを考えるときは、売る場所よりも、顧客の属性とニーズを比べます。公募要領では、法人・個人、業種、行動特性などが例として示されています。

比べる項目既存事業新規事業で説明したいこと
顧客の属性例:法人、建設会社例:個人、住宅所有者
顧客の困りごと例:工期内に施工を終えたい例:修繕時期や費用を見通したい
提供するもの例:施工請負例:定額の点検・修繕提案サービス
選ばれる理由例:施工品質・対応力例:定期点検、費用の見通し、迅速な提案

商圏を広げるだけでは足りません

既存の商品を、これまでと違う地域で販売するだけでは、自社にとって新たな市場とはいえません。また、既存市場の一部だけを対象にする場合や、既存顧客がそのまま利用する単なるメニュー追加も慎重な確認が必要です。

「東京都で販売していた商品を大阪府でも販売する」ではなく、「既存の法人顧客向け製品とは別に、これまで対象としていなかった個人の困りごとを持つ顧客へ、新しいサービスを提供する」のように、顧客層とニーズの違いを具体的に示します。

採択審査では「新市場性」または「高付加価値性」の根拠を示します

対象要件でいう「自社にとっての新たな市場」と、審査でいう「新市場性」は同じ意味ではありません。審査上の新市場性は、製品・サービスのジャンル・分野が社会においても一般的な普及度・認知度が低いかを見る観点です。客観的な統計・調査データで裏付けることが求められます。

ジャンル・分野を決めるときは、性能、サイズ、素材、価格帯、地域性、業態、顧客層、効果といった特徴を含めません。たとえば「介護施設向けの栄養価の高い大豆食品」ではなく、まずは「大豆食品」というジャンルで、社会的な普及度・認知度を確認する考え方です。

もう一つの高付加価値性は、同じジャンル・分野における一般的な付加価値や相場価格と比べて、高水準の高付加価値化・高価格化を図るかを見る観点です。単に希望価格を高く置くのではなく、比較対象、顧客価値、価値を生む自社の強みを示します。

STEP
比較する分野の標準は何か

一般的な付加価値や相場価格を、調査資料や競合情報で確認します。

STEP
顧客の何を良くするのか

時間、手間、コスト、不安、品質、リスクなど、どの課題を解決するのかを整理します。

STEP
なぜ自社が実現できるのか

技術、経験、体制、提供方法など、高い価値・価格の源泉を説明します。

設備投資は目的ではなく、計画を実現するための手段です

新事業進出枠では、機械装置・システム構築費または建物費のいずれかを、補助対象経費に含める必要があります。ただし、設備が必要であることと、事業が対象になることは別の話です。

  • 新たに提供する製品・サービス
  • 対象にする新たな顧客市場
  • 新市場性または高付加価値性の根拠
  • 価値を実現するために必要な設備・システム・建物

補助対象経費、交付決定前の発注、賃上げ要件、事業完了後の実務は、最新の公募要領と応募申請ガイドで確認しましょう。

申請前に使える整理シート

整理する項目既存事業新規事業根拠・確認資料
提供する製品・サービス
主な顧客・ニーズ・属性
自社にとって新しい点過去の売上資料、受注履歴、製品・サービス一覧
新市場性の根拠(該当する場合)ジャンル・分野の普及度・認知度を示す統計・調査
高付加価値性の根拠(該当する場合)同じ分野の相場・付加価値、自社の強み
必要な設備・建物・仕組み
売上・利益・付加価値額の見込み

よくある質問

日本初・世界初でないと申請できませんか?

いいえ。対象要件の新規性は、世の中での新しさではなく、申請する中小企業等にとっての新しさで考えられます。ただし、過去に製造・提供していたものを再開する計画は対象外です。

販売地域を広げるだけで新市場になりますか?

原則として、商圏が異なるだけでは足りません。既存事業で対象にしていなかったニーズ・属性を持つ顧客層に向けた市場かどうかを確認します。

高付加価値性があれば、対象要件を満たしますか?

いいえ。まず、自社にとって新しい製品等であり、自社にとって新たな市場に向けるという2つの対象要件が必要です。そのうえで、採択審査では新市場性または高付加価値性のいずれかを説明します。

新しい設備の導入だけで申請できますか?

いいえ。新事業進出枠では、機械装置・システム構築費または建物費を含める必要がありますが、設備導入そのものではなく、新規性と新市場を備えた事業計画を説明する必要があります。

まとめ:まずは「何を」「誰に」「どの根拠で選ばれる形で」提供するかを分けて書き出しましょう

  • 自社にとって初めて取り組む製品・サービスか
  • 既存事業と異なるニーズ・属性を持つ顧客市場か
  • 社会における普及度・認知度の低さ、または高い付加価値・価格の根拠を示せるか
  • その計画を実現するために、どの設備・システム・建物が必要か
新事業進出枠を検討されている方へ

自社の既存事業と新規事業、顧客層、設備投資のつながりを整理したい方は、TKマネジメントまでご相談ください。申請する事業者自身の考えと根拠が伝わる計画づくりを大切にしながら、準備の進め方を一緒に確認します。

参考情報

本記事は2026年9月2日に、公式サイト、最新の第1回公募要領1.2版、制度補足資料、応募申請ガイドを確認して更新しています。申請・公開前には必ず最新の公式資料をご確認ください。

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