新事業進出・ものづくり商業サービス補助金は、中小企業等が、設備投資を伴って新製品・新サービスの開発、新市場への進出、又は海外市場の開拓に取り組む際に活用を検討できる制度です。
「新しい設備を導入したい」と考える方も多い一方で、この補助金は単なる設備更新を支援するものではありません。その設備を使って何を新しく提供するのか、誰に届けるのか、なぜ今その投資が必要なのかを、事業として説明できることが重要です。
この記事では、制度の全体像、3つの申請枠、自社の事業が対象となる可能性を検討するための視点を、初めての方にも分かりやすく解説します。
※本記事は、2026年8月9日時点の第1回公募要領(1.1版)および公式情報を基に作成しています。申請時は必ず最新の公募要領・公式サイトをご確認ください。
- この補助金が支援する取組と、単なる設備更新との違い
- 革新的新製品・サービス枠、新事業進出枠、グローバル枠の違い
- 自社が申請対象となる可能性を確認する5つの視点
- 申請を急ぐ前に整理しておきたい要件・資金繰り・準備事項
第1回公募のスケジュール
第1回公募の主な日程は次のとおりです。申請受付開始日や締切日は変更されることがあるため、提出前には必ず公式サイトで再確認してください。
| 公募開始 | 2026年6月29日(月) |
|---|---|
| 申請受付開始 | 2026年9月30日(水) |
| 申請締切 | 2026年10月30日(金)18時まで |
| 採択発表 | 2027年1月頃(予定) |
申請までには、事業内容と投資内容の整理、電子申請に必要な準備、見積りや資金計画の確認などが必要です。締切直前に申請書を書き始めるのではなく、まずは自社の計画が制度の目的に合っているかを確認しましょう。
新事業進出・ものづくり商業サービス補助金とは
この補助金は、次の3つの取組に必要な設備投資等を支援し、企業規模の拡大・付加価値向上を通じた生産性向上と賃上げにつなげることを目的としています。
- 技術的革新性のある新製品・新サービスの開発
- 既存事業とは異なる新市場・高付加価値事業への進出
- 海外市場開拓(輸出)に向けた国内の輸出体制の強化
「設備を入れること」ではなく、その設備によって新しい価値を生み出し、どのように売上・付加価値を高めるのかが問われます。広告宣伝だけ、又は既存設備の単純な更新だけを目的とする計画は、慎重な確認が必要です。
また、補助金は原則として後払いです。対象経費の支払いを先に行うための資金計画に加え、補助事業終了後も付加価値額や賃上げに関する目標を管理する必要があります。
2026年度から公募される制度です
本補助金は2026年度から公募される制度です。過去に「ものづくり補助金」又は「中小企業新事業進出補助金」を検討・利用したことがある場合でも、今回の申請は第1回公募要領の要件を基準に確認します。過去の採択・交付決定の状況によっては申請に影響する場合があるため、個別の状況も早めに確認しましょう。
3つの申請枠の違い
補助対象事業枠は、「導入したい設備の金額」だけで選ぶものではありません。自社が何を新しくするのかを起点に、最も合う枠を検討します。
革新的新製品・サービス枠
自社の技術力やノウハウを活かし、顧客に新たな価値を提供する革新的な新製品・新サービスを開発する取組のための枠です。既存の製品・サービスの生産工程を改善するだけの取組や、新製品・新サービスの開発を伴わない設備導入は対象になりません。
開発する製品・サービスが顧客にどのような新しい価値を提供するのか、自社の技術・ノウハウがどのように活きるのかを説明できるかを確認します。
基本の補助上限額は従業員数により750万円~2,500万円です。賃上げ特例を満たす場合は850万円~3,500万円となります。
新事業進出枠
自社にとって新しい製品・商品・サービスを、既存事業とは異なる新たな顧客市場へ提供する取組のための枠です。日本初・世界初である必要はありませんが、自社にとっての製品等の新規性と、市場の新規性の両方を説明する必要があります。
「既存事業と何が違うか」だけでなく、「従来は対象としていなかったどの顧客層・ニーズを対象にするか」まで整理します。
基本の補助上限額は従業員数により2,500万円~7,000万円です。賃上げ特例を満たす場合は3,000万円~9,000万円となります。
グローバル枠
自社製品等による新たな海外販路の開拓に向け、国内の製造・提供体制を強化する取組のための枠です。取引先から指示を受けて受動的に設備を導入するだけの取組は対象外とされています。
自社主導でどの国・地域の市場を開拓するのか、そのために国内のどのような体制強化が必要なのかを説明できるかを確認します。
基本の補助上限額は従業員数により2,500万円~7,000万円です。賃上げ特例を満たす場合は3,000万円~9,000万円となります。
3つの申請枠を簡潔に比較
| 申請枠 | 中心となる取組 | 主な判断ポイント |
|---|---|---|
| 革新的新製品・サービス枠 | 革新的な新製品・新サービスの開発 | 顧客への新しい価値と、自社の技術・ノウハウを説明できるか |
| 新事業進出枠 | 新製品等による新市場・高付加価値事業への進出 | 自社にとっての製品等と顧客市場、双方の新規性を説明できるか |
| グローバル枠 | 海外市場開拓に向けた国内の輸出体制強化 | 自社主導の海外販路開拓と、必要な国内投資を説明できるか |
「はい」であれば、まずグローバル枠を検討します。
「はい」であれば、新事業進出枠を検討します。
「はい」であれば、革新的新製品・サービス枠を検討します。実際の該当性は、公募要領と個別の事業内容を踏まえて判断します。
自社が申請対象となる可能性を確認する5つの視点
補助金額や導入したい設備から考え始めると、事業の目的が曖昧になりがちです。次の順番で事業内容を整理すると、対象性を検討しやすくなります。
1. 単なる設備更新になっていないか
古くなった設備を同程度の性能の設備へ入れ替えるだけでは、対象にならない可能性があります。導入設備によって、製品・サービス・顧客市場又は海外展開がどのように変わるのかまで整理しましょう。
2. 新しく提供する価値と顧客が明確か
「誰に」「どのような困りごとを解決するために」「何を提供するのか」を具体的にします。新事業進出枠では、特に既存事業で対象にしていなかった顧客層やニーズを明らかにすることが重要です。
3. 設備投資とのつながりを説明できるか
各枠では、機械装置・システム構築費又は建物費など、必須となる投資があります。設備がなければ新事業を実現できない理由、設備導入後に可能になることを、事業の流れに沿って説明します。
4. 売上・付加価値の向上に根拠があるか
新しい取組であっても、市場規模、見込顧客数、販売単価、販売方法、競合との差などが曖昧では、事業の実現可能性を示しにくくなります。売上予測は希望ではなく、顧客ニーズや販売計画を根拠に組み立てます。
5. 賃上げと資金繰りを実行できるか
補助事業終了後3~5年の事業計画では、付加価値額の年平均成長率4.0%以上、一人当たり給与支給総額の年平均成長率3.5%以上、地域別最低賃金に30円以上を上乗せした事業場内最低賃金水準などの要件があります。目標未達の場合は補助金返還が生じる場合もあるため、実行可能性を慎重に確認する必要があります。
対象となる可能性がある事業・慎重な確認が必要な事業
次の表は、対象性を考えるための一般的な整理です。実際の対象性は、申請枠、事業内容、顧客市場、設備投資、実施時期、数値計画などを踏まえて個別に判断されます。
個別の事業が必ず対象又は対象外になることを示すものではありません。
| 対象となる可能性がある事業 | 慎重な確認が必要な事業 |
|---|---|
| 自社の技術を活かし、顧客に新たな価値を提供する製品・サービスを開発する | 既存品を同じ方法で作るために、古い設備を更新する |
| 自社にとって新しいサービスを、これまで対象にしていなかった顧客層へ提供する | 既存サービスの提供量を増やすことだけが目的である |
| 新しい国・地域への輸出に向け、自社主導で国内製造・提供体制を強化する | 取引先の指示に従い、受動的に設備を導入する |
| 新事業に必要な機械装置・システム又は建物費と、売上計画のつながりを説明できる | 設備を購入したい理由はあるが、新事業との関係を説明できない |
申請を急ぐ前に確認したい3つのこと
経費区分に記載されていても、すべての支出が自動的に補助対象になるわけではありません。枠ごとの必須経費、補助率、補助上限額、対象外経費を公募要領で確認します。建物費は新事業進出枠・グローバル枠のみ、海外旅費・通訳翻訳費はグローバル枠のみが対象です。
補助金は原則後払いです。設備代金等を一時的に負担できるかを確認します。金融機関から資金提供を受ける場合は、事業計画について金融機関等の確認が必要です。また、交付決定前の契約・発注は補助対象外となる場合があるため、自己判断で進めず公募要領を確認しましょう。
電子申請に必要なID等の準備、一般事業主行動計画の策定・公表、事業計画・見積り・資金計画の準備には時間がかかります。専門家の助言を受ける場合でも、申請者自身が事業内容と数値の根拠を説明できる状態にしておくことが大切です。
よくある質問
設備を入れ替えるだけでも申請できますか?
単なる更新だけでは対象にならない可能性があります。設備導入によって実現する新製品・新サービス、新しい顧客市場、又は海外展開との関係を説明できるかが重要です。
「新しい」とは、日本初・世界初でなければいけませんか?
新事業進出枠では、日本初・世界初である必要はありません。ただし、自社にとって新しい製品等であり、かつ自社にとって新しい顧客市場へ進出する取組であることが必要です。
補助金はいつ受け取れますか?
補助金は原則後払いです。採択後に交付申請・交付決定を経て事業を実施し、実績報告・検査などの手続後に支払われます。導入費用を先に準備できるか、資金繰りを事前に確認しましょう。
まとめ
新事業進出・ものづくり商業サービス補助金を検討する際は、まず次の3点を確認してみてください。
- 自社の取組が、3つの申請枠のどれに近いか
- 新しい事業と設備投資の関係を、顧客・市場・売上まで含めて説明できるか
- 賃上げ要件と、補助金入金までの資金繰りを実行できるか
補助金の利用を目的に無理に事業を組み立てるのではなく、自社の強みと顧客ニーズに基づき、事業として継続できる計画をつくることが大切です。
ご状況の整理からご相談いただけます
行政書士事務所TKマネジメントでは、事業内容や設備投資の構想を伺いながら、
本補助金の対象となる可能性や、申請前に整理したい点を一緒に検討いたします。
※採択又は補助金の交付を保証するものではありません。
参考資料:新事業進出・ものづくり商業サービス補助金 公式サイト/資料ダウンロード(第1回公募要領)
本記事は2026年8月9日時点の公式情報を基に作成しています。公募要領・関連資料は更新される可能性があるため、申請時には必ず最新の公式情報をご確認ください。

